議会へのノーマスク陳情・請願にご注意を! 

 【拡散希望】ノーマスク陳情・請願にご注意を!


はじめに


私たちは、神奈川県藤沢市内の小中学校に子どもを通わせる保護者の有志です。様々な人間関係やSNSをきっかけにつながり、学校現場における新型コロナ対策について情報共有や意見交換をしてきました。


職業、政治的信条、そして子どもへのワクチン接種に対するスタンス等も様々ですが学校現場における新型コロナ対策については科学的合理性がある対策を求め、子どもの健康と教育、日々の楽しい生活を守ってあげたいという点で一致しています。


昨今、SNS上で、一部の人たちが、新型コロナについて

「コロナは茶番」

「人口削減計画の一貫」

などという、科学的根拠を欠く陰謀論的な主張を繰り返し、「ノーマスク」「反ワクチン」を訴える状況を見て、もしかしたら、そのような市民が市議会に働きかけをするかもしれないと懸念しました。


先日、藤沢市議会の6月の定例会においてマスク着用緩和を訴える一件の陳情が出されました。結果、賛成少数で趣旨不了承となりましたが、これはまさに、私達のそのような懸念が当たったということだと感じています。


もちろん、何らかの事情でマスクをつけられない子どももいて、そのことにも学校現場は配慮すべきであり、いかなる理由によっても差別やいじめはあってはなりません。しかしそれについては、例えば藤沢市においては教育委員会からの通知も出ています。

私たちは、今の学校現場でのコロナ対策は理想的だなどとは思っていません。色々改善してほしいこともあり、意見も伝えてきました。しかし、全く違う観点からの改善要求、意見も学校現場、教育委員会に伝えられているのが現状です。私たちは、一部の市民から、科学的根拠に欠ける独自の主張を何度も強く訴えられる学校現場、教育委員会の困惑と対応の難しさも想像しており、現場に頑張って頂くためにも、科学的根拠ある対策の継続を支持する市民の意見も積極的に可視化する必要があると考え、そのような趣旨の陳情を提出しました。

このような、「学校現場で子どものマスクを外させたい」という陳情・請願が提出されるということは今、全国の市町村議会で起きています。ぜひ、皆さんの地元の市町村議会で、おかしな趣旨の陳情・請願が提出されていないか、情報には気を付けて下さい。背景には、陰謀論のような、科学的根拠の無い主張に基づいて精力的に動く一部の方々がいます。
これについて、広く世間に問題意識としてお伝えしたく、参考情報をここに公開します。

このような動きに各地で対抗するための陳情として使っていただける文案も以下にありますので、ご利用下さい。


2022年5月31日付で藤沢市議会に提出された「市立小・中学生の健全な成長、発達のための教育活動を求めることについての陳情」に関連して、市内の保護者有志として調査した結果と懸念は以下の通りです。


参考:令和4年5月24日 文科省事務連絡 「学校生活における児童生徒等のマスクの着用について」


  令和4年6月10日 文科省事務連絡「夏季における児童生徒のマスクの着用について」
 

文科省よくある質問:Q 6月10日に改めて事務連絡が出されましたが、マスクの着用が不要な場面について、何か変更があったのでしょうか。(令和4年6月10日更新)




マスク着用緩和を求める陳情の位置づけについて



以下が藤沢市議会(2022年6月定例会)に提出された陳情(7号)です。


マスク着用・黙食緩和を求める陳情


この陳情には藤沢市内保護者とされる提出者に加え、1000名を超える署名(賛同)が添付されています。一方、内容を精査したところこの陳情は必ずしも藤沢市の保護者によるオリジナルな陳情というわけではなく、子どものワクチン接種やマスク着用への反対活動を推進する全国的な活動と連動して展開されていることが分かりました。


(もともと、後述する全国的プラットフォームを通じて賛同者を募る仕組みがあるため藤沢市民の割合は多くはないと想定していました。そして、やはり、この陳情についての市議会での質疑において、藤沢市民の割合は約3割にとどまっていたことが明らかになっています)


この陳情の内容そのものは抑制的で一見すると穏当なものに見えます。しかし、私達が日頃SNS上で確認している様々な情報を総合すると、この陳情の背景にある活動は、科学的根拠に欠け、子育て世代の常識的な感覚からはかけ離れたものであることが分かりました。


まず、この陳情のオリジナルは小平市で採択された請願であると考えられます。同時期に茅ヶ崎市議会に提出された陳情(一足先に不採択になっています)も参考にしていると見られます。


<小平市>

子どもたちの豊かな育ちのための署名活動

(陳情理由、陳情項目の1および2が類似)


<茅ヶ崎市>

茅ヶ崎市内の保育園・小・中学校に通う全幼児・児童・生徒の健全な成長、発育のためマスク着用の緩和を求める陳情

(陳情理由の前半、陳情項目の3が類似)

茅ヶ崎市の陳情提出者YouTubeアカウントの動画


<拡散大希望!>全国初!6月10日 茅ヶ崎市の子供の口オムツを完全に自由化します
傍聴者・ギャラリー大歓迎!6月10日(金)茅ヶ崎市役所・本庁舎前午前9:30分集合!
ぜひ歴史的な瞬間に立ち会って下さい


茅ヶ崎市の陳情提出者の思想・活動は、YouTubeアカウントの他の動画やTwitterの投稿からすると、科学的根拠や一般常識を欠いたもので、マスクを「口オムツ」と称したり、「マスクは子供の命を危険に晒す」とするなど、非常に偏りのあるものです。


藤沢市におけるマスクに関する陳情の文面のみをみれば、特段過激であったり科学的根拠を著しく欠く要求をしているようにはみえません。

しかし、SNS上の情報などを総合し、私たちは、藤沢市で陳情を準備した方々の複数のSNSアカウントをほぼ特定し、そのタイムラインを相当の時間を遡って確認しました。そのSNSアカウントが「コロナ」「マスク」「学校」「ワクチン」などの単語を用いて行っている発信を検索し、このような発信をする方々が議会に陳情・請願という方法で働きかけていることには強い憂慮を感じざるを得ませんでした。


藤沢市の上記陳情に関わったとみられる方々のSNSアカウントでの発信をみると、ワクチン接種への反対活動を含め、茅ヶ崎市の上記陳情提出者を含む各地の方々・団体と連携していると考えられること、これらの活動に共通するフォーマット(類似の陳情/請願内容と1000を超える署名添付)、通底する独特な主張には、科学的根拠あるコロナ対策を願う市民としては不安を感じざるを得ません。


なお、藤沢市議会にマスク着用緩和を求める陳情を提出した団体のホームページには青山まさゆき氏の資料が掲載されています。青山氏は自由共和党(正式名称:過剰なコロナ対策と緊急事態条項に反対し、選択の自由を保障する共和党)の代表発起人です。


issu&member - 自由共和党



また、藤沢市の陳情に中心的に関わったと思われる方のSNSアカウントを見ると、「参政党」に賛同していたようです。(もしそうでなくても、参政党については一般的に以下の通り注意喚起したいと考えて書きます)


「参政党」とは2020年に結成されSNS上で活発な行動をすることで急速に多額の寄付金を集め、参議院選挙に向けて候補者を公募していることが話題となっている政治団体。

https://www.sanseito.jp/

参政党は新型コロナウイルス対策について独自の非科学的な理解をしていることが大きな特徴です。


「参政党の新型コロナ・ワクチン政策」には、「『遺伝子型ワクチン』について、参政党は、そのリスクの科学的な評価に基づいて、現行の接種推進策を根本から見直すことにより、国民の健康や自由、権利を守るべきことを提唱」「これから夏に向けて、マスク着用はかえって健康を害するリスクがあり、学校や職場、公共機関などでのマスク着用の慫慂は停止し、国民の自由を尊重する」と掲げられています。
https://www.sanseito.jp/news/4376/


更に、主要メンバーによる以下のような発言が確認されています。

■武田邦彦氏、井上正康氏、吉野敏明氏はいずれも参政党の「メンバー」としてHPに掲載されているが、同人らの連名による意見書(WeRise提言「厚生労働省は、自粛の必要性について、その科学的根拠を示すべきである。 また、新型コロナウイルスの存在を示す根拠となる科学論文を示すべきである」)には「新型コロナウイルス感染症はメディアが作り出した怪物」「マスクには、ウイルス感染予防・伝搬予防効果がないばかりか、健康を阻害するリスクの方が高い」などの記載あり。

http://www.werise.tokyo/declaration/

■松田学氏は参政党の「メンバー」としてHPに掲載されています。同氏のブログには例えば以下のような記載。

「第二に、マスク。これは脳の発達だけでなく、情緒面でも大きな問題になる可能性があります。楽しくおしゃべりしながら食事をしたことのない子どもたち。お互い距離をとりながらでないと遊べない子どもたち。マスクで人間の表情の微妙な変化からいろいろなことを感じ取ることを身に着けるべき時期に、無表情な顔に囲まれて育っている子どもたち…」

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12726863438.html

松田氏は駅頭街頭演説なども活発に行っており、2022年6月4日には都内で「選挙でコロナを終わらせる!」と題するシンポジウムに出席した。この告知として松田氏は自身のツイートで「ワく珍に関する大事なシンポジウム」と述べている。https://twitter.com/matsudamanabu/status/1530205930226610176

※「ワく珍」はワクチンを疑問視する人達が使う独自の表現

■神谷宗幣氏は参政党の「メンバー」としてHPに掲載されており、同党公認比例区第5支部長と名乗っているが、自身のブログにおいて「私は基本的にマスクをしません。​マスクはこまめに取り替えないと不衛生だし、呼吸が浅くなると免疫が落ちて病気になりやすくなるからです。​しかし、飛行機に乗る時やマスクをしないと怖がる人がいる場合だけ、思いやりの気持ちでつけるようにしています​」「マスクをつけないことを批判してくる人もいますが、なんでマスクをつけないといけないのかを明確に説明してくれません​」「政府はワクチン接種やマスク着用について、『任意』と言いながら、メリットばかりを強調しデメリットをほとんど公表せず、不安をあおる事で多くの国民に対して半ば強制しているような状態が続いています」と述べている。

http://www.kamiyasohei.jp/2022/02/05/10240/

■神谷宗幣氏及び武田邦彦氏の対談(ニコニコ動画)

新型コロナワクチンは生物兵器 神谷宗幣 武田邦彦

実験動物ネコが2年で全て死んだ

https://www.nicovideo.jp/watch/sm38831917




以上のような主張を掲げる「参政党」や「自由共和党」に賛同する市民が、いまだ感染収束どころか新規変異株の流入も懸念されている状況下で、基本的な感染対策であるマスク着用の緩和を求めて、学校現場や教育委員会、市町村議会に精力的に働きかけているというのが、藤沢市のみでなく、全国各地の市町村で起きていることです。今後更に増えることも見込まれます。強い憂慮と警戒を覚える事情です。


このような状況を知り、私たちは大変驚きを覚えるとともに、学校現場における新型コロナ対策が引き続き科学的根拠に基づく合理的なものであってほしいと願う保護者として、このノーマスク陳情・請願の背景について注意喚起を行うものです。



ワクチン接種やマスク着用への全国的な反対運動について


小平市の関係者が中心となり、以下のプラットフォームの設立・運営に関与しています。


子どもコロナプラットフォーム

(ワクチンに関する活動が中心で、南大津市長南出氏が代表、メンバーとして武田邦夫氏、小平市議、母親を中心とした消費者団体「ママ♡エンジェルス」などが参画しています。「ママ♡エンジェルス」はオーガニック給食を推進していますがワクチン、マスクについても活発に活動をし、国会議員への働きかけなどを行っています)


子どもえがおプラットフォーム

(「一人では届きにくい保護者の声を、全国のみなさんと力を合わせて一斉に」上げて、「各地の保護者が『自治体へ請願を出す』」ことを提案しています。「オミクロンが収まり、マスクが苦しい夏が来る前の6月議会が最大のチャンス」として、マスク着用を中心とした対策緩和を全国展開するための活動を支援している様子です)


子どもコロナプラットフォーム発起人メッセージ

(「ワクチンが子ども達にも実質的に強要され(つつあ)る状況と、マスクが実質的に強要されている状況とには多くの共通点」「相手の愛情に訴えかける」「『マスク着用には意味がない』という論理展開はしない」「全国で同様な悩みを抱える方々のためのチャットスペースを開設」とあります)


チャットスペース

(「子ども達のマスクや黙食、もしくは子ども達への新型コロナワクチンに関連した、請願や陳情の署名募集にもご利用いただけます」とあり、全国的に展開されている同様の活動で活用されている可能性が高いと考えます)


小平市での請願採択で大きな役割を果たした市民によって、「全国有志子どもを思う会」という団体も設立されています。


全国有志子どもを思う会

各自治体紹介場所


上記の2つのプラットフォームと「全国有志子どもを思う会」には、全国の自治体の賛同者や活動の情報が掲載されています(ちなみに「全国有志子どもを思う会」には神奈川県では川崎市と大和市が掲載されています)


現在、同様の動きがみられるとして情報が寄せられた自治体としては、他に以下を確認しています。


・鎌倉市 ※藤沢市、茅ヶ崎市同様、不採択になっています

・大和市

・西東京市

・小金井市

・日野市

・府中市

・三鷹市

・浦安市

・柏市

・足立区

・江戸川区

・品川区

・世田谷区

・流山市

・山梨県

・愛知県

・春日井市

・滋賀県

・名古屋市

・草津市

・赤磐市

・上越市

・長浜市

・うるま市 など


次は9月の議会に向けて、同様の動きが全国で改めて展開されると想像しています。


信頼できる地元議員に相談してお住まいの自治体での動向に注意を払っていただき、問題意識を持たれた場合は教育委員会への要望書や、議会への陳情・請願などを通じ、ご意見を自治体に届けることもご検討ください。


ご参考までに、私たちが提出した陳情と参考資料を添付します。


私たちが提出した陳情:

613藤沢市陳情書(公開用)

陳情に添付した参考資料:

藤沢市6月定例会8号陳情添付資料1-10.pdf

委員会における意見陳述と質疑の動画:

藤沢市議会で、2つの、異なる方向性の保護者からの陳情が提出され、意見陳情及び質疑された当日の状況は藤沢市議会 議会録画放映 (2022/6/13子ども文教常任委員会)からご覧になれます。

「7号陳情」がマスク着用緩和を求める陳情、「8号陳情」が科学的根拠あるコロナ対策の継続を求める陳情です(前半で両陳情の審議が行われています)。


※陳情提出時には神奈川モデルにおける藤沢市民病院の位置づけ(中等症以上の小児コロナ受入拠点医療機関:13床)から、「小児病棟に入院した患者数を見ても、決して軽視できない症例(中等症以上)が多数あった」と記載しましたがその後市民病院医事課に確認し、この数字には軽症例や家庭療養が難しい小児の受け入れも含まれていたことを確認済みです。  一方、市内の医師会に所属する小児科医からの情報から無視できない症例(容体の重い小児例)が複数あったことを把握しています。私たちは入院せざるを得ない状況にある子どもが、延べ人数とは言え、これだけ発生したことは「決して軽視できない」事態であると考えます。

 全体に占める割合はごく小さいとはいえ、2022 年 5 月 10 日時点の厚労省の集計で、小児の死亡例は10 歳未満 6 例、10 代 8 例と14例も確認されています。このようなことは「1人でも多すぎる」のではないでしょうか。基礎疾患がない子どももいたと報じられています。後遺症のことも考えれば、子どももできるだけ感染しないように、できる対策は継続すべきです。マスクをしていても感染することはあり、完璧ではないものの、マスク着用による感染抑止効果は科学的に確認されています。



※陳情・請願の主張に説得力をもたせるためには、引用する資料はできるだけ公的機関のものであることが望ましいです。私たちは、なるべく、WHOや厚労省など、公的機関の最新資料を添付することを心がけました。

なお、ノーマスク陳情・請願には、医学的に広く支持されているとは到底いえない、独自の主張を展開している個人クリニックの院長のブログなどが多数添付されている傾向があります。




ノーマスク陳情・請願の背景にみられる典型的な主張とそれを否定するための資料について


以下、ノーマスク陳情・請願の背景にみられる典型的な主張とそれを否定するための資料について触れます(必要に応じ今後も追加します)。


➀ 「マスクは健康に有害」か?


よく、ノーマスクを訴える方々は


「マスクが体内に入る酸素量を制限する」

「血液中の二酸化炭素が過剰になる」

「マスクが体の免疫システムを抑制し、感染にさらされる」


という主張を繰り返されますています(その根拠には、かねしろクリニックのブログが引用されることが多いようです)。

 しかし、BBCが専門家に確認したファクトチェック記事によってこれらは虚偽、または証拠のない主張であるとされています。


BBCリアリティーチェック記事抜粋(公開用)


日経新聞に掲載されたナショナルジオグラフィックの記事にも同趣旨の記載があります。

2022/3/14日経新聞掲載 マスクは子どもに害? 米国で根強い「有害論」の現在地 (ナショナル ジオグラフィック)


マスクは確かに不快で夏場は暑苦しく感じることもあります。しかし、そもそも本当に健康に有害であれば、例えば日常的に手術のためにマスクを着用している医師にはマスクに起因する健康被害が出ていないとおかしいはずですがそのようなことは聞いたこともありません。業務上の必要でマスクを日常的に着用する職種は他にもあるでしょう。



もちろん私たちも、感染が収束したり、収束していない状況でも、換気が十分に保たれ、身体的距離も十分な状況でまでマスクを着用しなくていいと考えています(文科省通知等にある通りです)。しかし、そもそも「マスクが健康に有害だから外すべき」というのはあまりに荒唐無稽ではないでしょうか。


② 「マスクは感染対策に効果がない」か?


ノーマスク陳情では、「そもそもおよそマスクは感染対策に効果がない」と、マスク着用による感染抑止効果について否定する研究結果を持ち出す傾向があります。


もちろん、マスクを着用しさえすれば感染を完全に防げるわけではありません。しかし、感染を減らす、抑止する効果があることは科学的に確認された事実です。これさえも否定する見地からの、マスク着用緩和を求める陳情・請願の多発には警戒しかありません。


たとえば、自分と相手の双方がマスクを着用することで、ウイルスの吸い込みを7割以上(双方が布マスクで7割減、不織布マスクで75%減)抑えるとの研究結果については、厚労省が紹介している東京大学医科学研究所の研究Q&Aにある通りです。



また、ノーマスクを訴える方々が引用するものとして、「咳エチケットで感染防止拡大」との資料もあります。これは経産省の「新型コロナウイルス感染症関連」というホームページの中に保管されており検索すれば見つかりますが、当該ページからのリンクは現在は非掲載の様子です。


内容を見ると「現在、マスク不足で心配されているかと思います」とある通り、これは、2020年のマスク不足時に厚労省、経産省、消費者庁が作成したもので、この資料は現時点で厚労省のホームページには掲載されておらず新たな資料に置き換えられています。そしてそこでは、マスク着用が1番目の対策として掲げられています。


なぜこのような古い資料を持ち出すのか、理解に苦しみます。少し調べれば根拠が不確かであることは明らかです。このような怪しげな参考資料を見ても、ノーマスクを訴える方々の言説が信用に足るものではないことが分かります。行政も学校関係者も、引き続き、情報リテラシーを持って、根拠なき主張に対しては毅然とした対応を取っていただきたいと願います。


厚労省の咳エチケット啓発ページ

厚労省の咳エチケット啓発リーフレット


なお、学校での感染対策を実践的に指南する文献として、公益財団法人学校保健協会による「学校における感染症対策実践事例集」というものがあります。



「学校における感染症対策 実践事例集」(公益財団法人 日本学校保健会)



ここには、学校における様々な場所で換気を確保するための実践的な事例が記載され(CO2モニターによる監視やサーキュレーター使用等)、マスク着用についても当然感染対策の1つとして記載されています。マスクだけで十分な感染対策にならないからといって「マスクは効果がないから着用させるべきではない」というのはあまりに短絡的で科学的根拠がない主張です。



③ 「コロナは子どもがかかっても無症状か軽く済むから問題ない」か?


世田谷区は新型コロナ後遺症に関するアンケート調査を実施し公表しています。

世田谷区新型コロナ後遺症に関するアンケート調査


これは、学校現場等で子どもの大量感染が確認されたオミクロン株蔓延以前の期間の感染を対象としたものですが、感染時に無症状でも、その3割には後遺症が確認されたことがわかります。10歳未満、10代の子どもにも相当大きな割合で後遺症が確認されています。


藤沢市では、世田谷区のような後遺症に関する調査を行ってはいないので、後遺症の実態は不明ながら、世田谷区の後遺症に関する調査をみれば、子どもの後遺症も決して軽視できないことは明らかです。子どもにも日常生活に支障をきたすような後遺症がのこることがあるということについては、昨今報道も増えています。

NHKクローズアップ現代 急増“オミクロン後遺症”最前線からの報告


藤沢市はインクルーシブ教育が先進的で、障がいがある子どもの支援に手厚く、希望すれば居住地区の学校の通常の学級に入学することができます。他にもそのような自治体はあるでしょう。なんらか障がいがあって体が弱い児童生徒や、喘息などの基礎疾患がある児童生徒もいます。そのような、健康リスクがある同級生のためにも多少うっとうしいけれどマスクの着用は必要と理解して着用している子どももいます。そのような必要性を教えることも教育の一環といえるのではないでしょうか。


また、児童生徒自身は健康に問題がなくても、感染した時に悪化が懸念される健康リスクを抱える同居家族がいる児童生徒も珍しくないでしょう(高齢者、妊婦、高血圧や糖尿病等の基礎疾患患者)。


家族が医療従事者や介護職員など、特に感染を避けるために神経をとがらせるような職種に従事しているという家庭の子どもも少なくありません。そのような家庭の子どもは、親が家でも厳格な感染対策としてマスクをしている様子などを見て、自分もなるべく感染しないようにと、学校でのマスク着用など自ら考え対策している子どももいます。


「子どもがいつまでもマスク着用をさせられるのはかわいそう」という声がありますが、感染が収束していない状況下、十分な感染対策を講じない結果感染が拡大し、学級閉鎖の多発や行事中止などに追い込まれてしまうことのほうが子どもにとって「かわいそう」なことであり、本末転倒です。

もちろん私たちも、いつまでもマスクを着用したくもなく、子ども達に理由もなく着用させたいわけではありません。感染状況を見れば、今マスク着用緩和を積極的に呼びかけるのは時期尚早だろうということです。子ども達のためにも、少しでも早く感染を収束させるためのあらゆる努力をすることが大人の責任であると考えます。

 

④ 「熱中症対策としてマスクを外すべき」か?


気温が高くなり、体育の授業や部活動での熱中症の懸念が高まっています。

熱中症対策はもちろん必要です。

しかし、「熱中症対策としてマスクを外すべき」と、熱中症対策にかこつけてマスク着用緩和を強く主張されることは科学的根拠を欠いています。


ア マスク着用しなくても熱中症になる

そもそもマスクをしていなくても熱中症になります。コロナ前から熱中症はあったのですから当然ですね。最近も、以下のように、マスクを着用しないで体育の授業を行っていた際の熱中症搬送が複数報じられています。


2022/6/17読売新聞 狛江市小学校で生徒が熱中症で搬送(マスク無し)



2018年に愛知県で小学校1年生が学校で熱中症となり死亡したという大変痛ましい事件がありました。しかし2018年ですからコロナ前です。学校にはエアコンが無かったそうです。

熱中症対策としてはエアコン設置、水分補給、猛暑日には屋外活動をしないなどをすべきであって、これらをしないまま「熱中症対策としてマスクを外すべき」というのは全く本質的ではない議論としかいえません。



イ マスク着用しても深部体温はあがらないというのが医学的に確認されていること

マスクを着用していたらより熱中症になりやすいのであれば、確かに、外すことで熱中症リスクを少し軽減できるとはいえるでしょう。

ただし、実は意外なようにも感じられますが、マスクを着用しても深部体温は上がらず、「マスクを着用していても、熱中症につながるほどの影響はない」というのが、専門家の調査により現在得られている科学的結論です。


屋外ではマスクを外したほうがよい? マスク着用による身体の変化と熱中症のリスクについて(倉原優医師)


この記事で倉原医師は以下のようにまとめています。

重要なのは、マスクを着用していようとしていまいと、水分補給と休息をしっかりおこなうことです。」

「屋外でマスクを着用していても、熱中症のリスクが上昇するという結論は示されていないものの、不快感や身体への負担が大きいことがわかりました。

子どもや高齢者がマスクを着用し続けると、熱中症のリスクは高くなるかもしれないので、感染リスクが高くない屋外ではマスク着用を継続する意義はなさそうに感じます。

ニューヨーク州では、オミクロン株のうちBA.2.12.1の流行がみられ始めており、ふたたび入院患者数が増加に転じています。南アフリカでは、BA.4系統、BA.5系統が流行し始めています。

社会における感染を低レベルに抑えることは、ウィズコロナで医学的弱者を守るために必要不可欠です。ワクチンの効果がオミクロン禍以前よりもやや弱まっていることから、マスクなどの基本的感染対策を一気に撤廃することは難しいでしょう。」


夏場は特にマスクは不快です。外せる時は外すほうがいいかと思います。

しかし感染対策のために外すべきでない時にまで外すことを推奨するのはおかしいです。


ウ 熱中症対策とコロナ感染対策の両方が必要


学校現場でマスク着用緩和を求める保護者の声が大きくなっていることを踏まえてのことと思われますが、最近文科省からは関連する2つの通知が以下のように出ています。


令和4年5月24日 文科省事務連絡 「学校生活における児童生徒等のマスクの着用について」


令和4年6月10日 文科省事務連絡「夏季における児童生徒のマスクの着用について」 


これらは、学校生活においてマスクの着用が不要な場面を具体的に明記していますが、いずれも、基本的な感染対策としての「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等を 徹底すべきという従来の考えを変更するものではありません。

学校現場では、熱中症対策もコロナ感染対策も両方必要なのです。
確かに暑い夏場はマスクの不快度もあがります。子どもにマスクを外させたいという親心ももっともです。そうであれば、コロナ感染対策としての換気の徹底や距離の確保等も十分に考え、熱中症対策とコロナ感染対策を両立した対策を求めるべきです。
ただ「熱中症が怖いからマスクを外させるべき」というのはコロナ感染対策を軽視した短絡的な意見です。

結局暑い時期のマスクはどうしたらいいのか、悩む方も多いと思いますが、以下など色々な報道で専門家が丁寧な説明をしています。ただマスクを外せば熱中症対策になるというわけでは決してないということは何度も強調したいです。


名古屋工業大学の平田晃正教授によりますと、これまでの研究ではマスクを着用した状態と着用していない状態で体温を比べるとマスク周辺以外ではほとんど変化がなく、体の深部温度についても0.06度から0.08度の上昇にとどまり、熱中症リスクの目安とされる1度の上昇までは至っていなかったということです。
平田教授は「マスクを着用しただけで熱中症のリスクが著しく上がるとは考えにくいが、マスクを着用して強めの運動をした場合などには熱中症のリスクにつながるかもしない」と指摘しました。」
「熱中症対策にかぎらず人との距離が離れていてばマスクを外してもいいし、感染のリスクが高い場面ではマスクはしっかり着用したほうがいい。マスクを外すかどうか場面に応じて判断することが重要だ」

⑤ 「マスクは子どもの社会性の発達を妨げる」か?

低年齢の子どもがいる保護者ほど、心配になることだと思います。
これについては国内外の専門家が以下のようなことを述べており、結論としては心配は無用です。


東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構・辻晶 主任研究者
「すごく柔軟で赤ちゃんの脳は、どのような社会と、言語環境に生まれるか分からない状態で発達するようにできていますので、  『マスクなんかには負けないわ』という感じだと思います」



エール大学小児研究センターの児童精神医学・心理学教授であるウォルター・ギリアム氏:
子どもにとってマスクをしている人の感情を読み取る難しさは、サングラスをしている人の感情を読み取るのと同程度だということが示されている」
「子どもたちはすぐにマスクをした人の感情も読み取れるようになるでしょう」「子どもの能力をもっと信じてあげましょう」




おわりに


繰り返しになりますが、私たちは、最近、TwitterやFacebookなどのSNSにおいて、「ノーマスク、反ワクチン」を掲げる一部の人たちが、非科学的な根拠に基づく行動をエスカレートさせているようにみえることを危惧しています。


例えば子ども向けのワクチン接種に抗議する目的で、小児科クリニックや子ども向けワクチン接種会場に無断で立ち入った容疑(建造物侵入罪)で逮捕者も出して報道された「神真都Q」(やまときゅー)という団体については、ご承知のことと思います(なお、「神真都Q」については、茅ヶ崎市の陳情提出者は「妨害団体」と表現するなどしており、同趣旨の主張をしているように見えても上記で紹介した活動とは無関係と思われます)。


この「神真都Q」は「コロナは存在しない」「マスクは害」などと訴え、神奈川県では湘南支部が活発に活動しています。2022年2月には市内の公園発のノーマスクデモを行い、市民としては不安を覚えました。


もちろん現在各自治体で請願・陳情を提出している方々のほとんどは「神真都Q」のような団体と一線を画しており、心情としては純粋に子どもたちのことを思い活動しているのだと推察します。

しかし、「コロナは存在しない」「マスクは害」という主張に近い科学的根拠に基づかず良識を欠く発信をSNSで繰り返している人も見られます。実際に、一部自治体の署名活動に協力しているSNSのアカウントでは、神真都Qの動画や米国の陰謀論集団とされる「Qアノン」の記事を拡散している事実も確認しています。そして、そのような身近な市民アカウントの中には医療、保育、介護など、本来もっとも守られるべき方々と接する職種の方も含まれているようです。


私たちは、このような陰謀論的で非科学的な主張に基づいて、行政、学校、生活圏の施設などに働きかける方々の活動を強く警戒します。

 子どもの健康と教育を守りたいと考える、全国の良識ある市民の方々と情報共有、意見交換しながら、今後も活動を継続していきます。

 本件についてのお問い合わせ等は以下のTwitterDMにお寄せ下さい。

 藤沢市保護者有志( 藤沢市保護者有志Twitterアカウント 



※画像は藤沢市内のスーパーです。コロナの関係で試食提供は当面控えているそうですが、従来であれば試食提供していたコーナーにこのような掲示がありました。市中感染拡大時期は、客も従業員も守るためにも、このような掲示によるアナウンスがあることはありがたく思います。どうしてもリモートワークにしようのないお仕事に従事されている方に日常生活を支えられているということを実感するコロナ禍です。




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