藤沢市教育委員会への緊急提言

 2022年2月9日

藤沢市教育委員会への緊急提言


神奈川県から出された2022年2月7日の対応方針を受け、藤沢市から「学校における取り扱いや児童生徒に陽性者が確認された際の対応を変更する」という保護者向け通知がありました。


オミクロン株による感染拡大に伴う県立学校における臨時休業に係る当面の対応について

オミクロン株の感染拡大に伴う市町村立学校における臨時休業等の当面の対応について(通知)


私たちは、県民/市民として、今回の通知を見て、大変落胆しました。神奈川県としては「オミクロン株の特性」として子どもはほとんど重症化しないとの傾向を前提としたようです。

しかし、子どもの重症例はすでに出ています

厚労省のオープンデータを確認すると、2022年2月1日時点で、10代男性2名、10歳未満男性2名が重症者数として登録されています。この数字は週次で更新されるものであり、累計ではありません。子どもの感染者や学校クラスターが急増していますし、重症者数は遅行指標ですから、さらに増えていくことが懸念されます。「オミクロン株は軽症」というイメージが先行していますが、子どもでも重症化リスクはあります。海外では、米国英国のように子どもの入院数が過去最多になったというニュースも散見されます。デルタ株もまだ市中に残っています。さらに、仮に軽症であったとしても、MIS-CやLong Covid(いわゆるコロナ後遺症)という子どもにとってより深刻なリスクもあります。



2月9日付NHK報道です 「東京 10歳未満コロナ感染 今月2万人超 8日間で先月1か月と同じ」

東京 10歳未満コロナ感染 今月2万人超 8日間で先月1か月と同じ | 新型コロナ 国内感染者数 | NHKニュース

東京都の担当者のコメントとして「都の担当者は「家庭内で保護者などに感染が広がることによる新規陽性者の増加や、結果として社会活動に影響が及ぶ事態を懸念している」とあります。子ども自身を感染から守るべきことはそれ自体もちろん重要ですが、子どもの感染を抑えられなければ、社会機能を維持できないのです。子どもの感染により保育園が休園となって医療従事者が出勤できないといった事例も各地で頻発しているようで、そういうこともこの状況下で医療を深刻に圧迫しています。

神奈川県は、災害対応におけるトリアージの発想に基づき「相対的に」リスクの低い年齢層については、社会機能維持のために、一定の状況下では積極的疫学調査の対象外とし、学校による自力の調査に委ねるとしました。その上で、ほぼクラスターに近い状況になるまでは学級閉鎖をせず通常登校とする方針です。子どもは、大人を信じて学校に通っており、自分で自分を十分守ることができません。

県レベルでは鳥取県和歌山県、市区町村レベルでは墨田区寝屋川市のように子ども・学校のリスクを軽視せず、学校感染対策の特命チームを設けたり躊躇なく学級閉鎖をしたりしつつ幅広い検査を行い、学校での感染対策強化にベストを尽くしている自治体もあります。

行政として、また大人として、「社会の宝」である子どもを、全力で守るという姿勢を放棄したに等しい県の方針をほぼそのまま受けれてしまっていることに対して、子育てしやすい生活環境作りを目指している保健所政令市としての矜持はないのでしょうか。


神奈川県の対応方針

要点

・「感染者の急増により保健所の業務が逼迫している期間」の一時的な対応である

・校内における感染拡大を防止し、児童・生徒等の安全安心の確保を図る

・必要な範囲、期間に限定して臨時休業等を行う

・オンラインを活用した学習等により、学びの保障に万全を期す

当面の対応

・学校が濃厚接触者相当の者のリストを作成し、保健所への送付により濃厚接触者が追認される

・陽性者の判明から濃厚接触者の特定の間の臨時休業は原則として行わない

速やかに濃厚接触者確認ができない場合は、必要な範囲について、一旦、教育活動を停止する

・感染が広がっている可能性が考えられる場合には、必要な範囲、期間の臨時休業(3~5日)を実施

学級閉鎖:陽性者が10~15%以上

学年閉鎖:複数の学級閉鎖

休校:複数の学年閉鎖

 

藤沢市の対応方針

変更前の内容との対比(新旧対比表など)が掲載されていないため、単独の通知だけ見ても、何がどう変わったのか非常にわかりづらいため、重要な点について、前回の通知と比較し、その問題点を指摘します。

 

変更前

2021年9月通知 今後の本市立学校の教育活動について

・1人の感染者が判明した場合、消毒の実施や濃厚接触者を特定するまでの間は、原則として当該感染者の学級に在籍する児童生徒を自宅待機とします。その他、学級以外に感染が拡大している可能性のある場合は、その状況に応じて学年閉鎖や学校全体を臨時休業とすることがあります。学級閉鎖等の期間中は外出を控え、手洗い等を徹底するなど、ご家庭におきましても感染拡大防止に向けたより一層のご協力をお願いいたします。

学校が児童生徒の感染者を把握し、学校運営に影響がある場合は、学校から家庭に対し「すぐメール(連絡メール)」等でご連絡いたします。(下線は保護者有志によるもの)


変更後

2022年2月通知 新型コロナウイルス感染症に関する対応の変更について

・この度の変更により、学校が積極的疫学調査(濃厚接触者の特定等)の対象外となったため、1名の陽性者が確認されても、直ちに学校全体に行動制限をかけることはいたしません(下線は保護者有志によるもの)

(中略)

・学級内に陽性者が3名程度確認され、健康調査票にある風邪の症状や発熱等で欠席している者を加えて学級の欠席者が2割程度となった場合、学校と学校医で相談のうえ、週休日を含め3~5日の学級閉鎖を検討します。

(中略)

学級閉鎖等の学校運営に影響がある場合は、その対応について該当のご家庭に対し「すぐメール(連絡メール)」等でご連絡するとともに、あわせてその対応状況について当該校全体のご家庭にお知らせいたします。

(下線は保護者有志によるもの)


問題点

自宅待機方針について

「1人の感染者が判明した場合、当該学級を自宅待機」という措置は今後行わないのでしょうか? かなり最近藤沢市ではそのようなことが行われた学校が現にあるのですが、今後「1人の感染者が判明した場合」はどうするのでしょうか?


そもそも、1人の感染者が判明した場合に「直ちに学校全体に行動制限をかけること」はこれまでも行っていなかったはずですので、(あたかも、『これからはそれをやめます』とでもいうかのような)今回の通知は不可解です。1名の陽性者が確認」された場合にどのような対応をとるのか明記されておらず何が変わったのか分かりません。

今まで藤沢市が行っていた「自宅待機」は、調査が終わるまでの期間、子ども同士の接触を防ぎ、拡大を防止するうえでは有効であったと考えます。

 県の市町村向け通知においても、感染が確認された場合は「状況に応じて速やかに該当する学級等の一定の単位(場合によっては部活動等)のみ停止」する、あるいは「速やかに濃厚接触者確認ができない場合は、必要な範囲について、一旦、教育活動を停止」するよう方針が示されています。これは、これまでの藤沢市の自宅待機と何ら矛盾するものではありません。しかし今後この「1人の感染者が確認された場合、調査が終わるまでは当該学級を自宅待機」が継続されるのかわかりません。 非常に感染力が高いオミクロン株、デルタ株を前提にすれば、「1人の感染者確認」でも既に学級内に相当の感染が拡がっている可能性を想定した対策をしなくてはなりません。その対策について藤沢市がどう考えているのか、明らかにしてほしいと考えます。

 

学級閉鎖基準について

市の通知には「学級内に陽性者が3名程度確認され、健康調査票にある風邪の症状や発熱等で欠席している者を加えて学級の欠席者が2割程度となった場合」とあります。陽性者ではなく欠席者としている点は考慮するとしても、これは神奈川県や横浜市の基準より緩いように見えます(報道を見る限り、横浜市よりは緩いですし、「程度」と書いてあり曖昧です)。

35人学級であれば7名、40人学級であれば8名の欠席者(陽性者/有症状者)が発生するまで、つまり、ほぼ「クラスター(疑い)になるまで学級閉鎖しない」ことを意味しますが、そのような状況になるまで無理をして通常登校を続けることで、かえって感染拡大するのではないでしょうか。

【(参考)臨時休業実施の判断基準】

●神奈川県

「直近3日間の陽性者が学級において、状況に応じ10~15%以上確認され、学級内で感染が広がっている可能性が高い場合」

●横浜市

「1クラスで3人以上の感染か、2人以上の感染者と熱などがある児童生徒の合計がクラスの15%を上回った時に学級閉鎖」

学級閉鎖の新基準 「1クラス3人感染」 横浜市教委きょうから

 

保護者への通知(「すぐメール」)について

市の通知には 「学級閉鎖等の学校運営に影響がある場合は、その対応について該当のご家庭に対し『すぐメール(連絡メール)』等でご連絡する」とあります。

これに関して、気になるのは以下の点です。

① 学級で感染が確認されても、それが1、2名程度だと「学級閉鎖しない」、そして「学校運営に影響がある場合とはいえない」として、今後は一切保護者に通知されないということでしょうか。今後も、1名でも感染が判明したら保護者に通知すべきだと考えます。

② 学級閉鎖があった場合、当該学校の全保護者に通知されると考えてよいのでしょうか。「該当のご家庭に対し」という表現が気になります。2月9日時点では、当該学級以外の全保護者に対して学年や学級を含む情報が配信されている様子です。引き続き学級閉鎖に関しては、少なくともこの粒度での配信を維持すべきです。

 「すぐメール」に関しては、以下を藤沢市に求めます。
 ●陽性者が1人でも出たら、
  同一学級の保護者には、児童の在籍学級で感染者が確認されたことを通知
  違う学級の保護者含め学校の全保護者に、学校で感染者が確認されたことを通知
  という対応を必ずすることを藤沢市として明らかにして下さい。
 ●上記も含め、「すぐメール」の運用ルールが公開されていません。
  明文化して公開して下さい。
 通知、情報公開のルールが明らかであれば、そのルールに則って情報が来ないということは今は自分の学校では感染者の確認はないのだ、と判断することができます。明らかで無ければそういう判断をできず、念のための自主登校を過剰にしなくてはならないことも考えられます。


健康調査説明書について

健康調査説明書

市の通知には「児童生徒の同居家族に発熱や症状があり、かつ、医師や保健所の指示で、新型コロナウイルス感染症の検査(PCR検査、抗原検査)を受ける場合」に出席停止となるとされていますが、2021年9月通知では「児童生徒の同居家族に症状がある場合も、児童生徒を出席停止とします」としていました。

その後、藤沢市教育委員会は感染レベルがレベル1相当に落ち着いたことを確認し、10月15日から同居家族に症状がある場合でも出席停止とせず「登校可」にしました。保護者有志がその時点で教育委員会と会話した際には「感染レベルが上がれば、また厳格化します」とのことでしたが、1月初旬に神奈川県がレベル2に移行しても緩和されたままです(その間、分科会方針による感染レベルの定義は変わりましたが、以下に示す通りレベル2以上では厳格化すべきです)。

最新の健康調査説明書の条件では同居家族が「有症状」かつ「検査」した場合となっており、以下の国・県が示している方針と矛盾しています。

 

●文科省

学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル

「感染がまん延している地域(レベル2や3の感染状況の段階である地域)においては、同居の家族に発熱等の風邪の症状がみられるときにも、出席停止の措置を取ります」

発熱等の風邪の症状がある場合等には登校しないことの徹底

「発熱等の風邪の症状がある場合には、児童生徒等も教職員も、自宅で休養することを徹底します(レベル3及びレベル2の地域では、同居の家族に風邪症状が見られる場合も登校させないようにしてください)」

 

●神奈川県

出席停止等の扱い[学校保健安全法第19 条等]

「同居の家族に発熱等の風邪症状があるなど感染の可能性について保護者等から申し出があった者」→原則、当該家族の症状が改善するまで

学校保健安全法第19 条による出席停止ではなく、「校長が出 席しなくてもよいと認めた日」として扱うことができる。

 

緊急提言

①今後も、陽性者が1名でも判明したら、「学校が濃厚接触者相当の者のリストを作成し、保健所への送付により濃厚接触者が追認される」までは自宅待機させる措置は継続する

②今回打ち出した方針にこだわらず、陽性者が3名以上確認されたら躊躇なく柔軟に学級閉鎖を行う

③「すぐメール」の運用体制を充実させ、教職員と子どもの健康を守るうえで生命線となる感染情報を、学年・学級なども含む詳細なレベル、かつ日次で感染状況が分かるようにタイムリーに発信する

④同居家族に症状がある場合は検査有無にかかわらず出席停止とする

⑤希望者はオンライン学習や給食前の帰宅が選択できることをより積極的に周知する


コメント

このブログの人気の投稿

議会へのノーマスク陳情・請願にご注意を! 

藤沢市の学校コロナ対策への指摘事項